言いたいことは言えない でも言いたくないことはなおさら言えない 言わなくても伝わればといつも思うのだけど

SUNABA文学館


「SUNABA文学館 書物に恋するアートたち。」無事に終了いたしました。 ありがとうございました。  次回もまたよろしくお願いいたします。

2013年12月29日日曜日

川瀬巴水展

川瀬巴水の版画展(千葉市美術館)へ行ってきました。
この展示に興味を持ったのは、巴水の版画が浮世絵風でありながら江戸版画には無い霞んだような表現と、それによる遠近法。夜景が多い事。それと谷内六郎さんや原田泰治さんの絵のような懐かしいような風景を描いているからでした。

さらに作品を見て驚いた表現は、吹雪の雪が本当に吹雪いているかのように絵に動きがある作品や、浜(港)の海底が見える海水の透明感をリアルに表現している作品などがあった。これを絵じゃなくて版画で表現してるとは。。。。 また夜景は、ホントに暗い(笑)たとえば歌川広重の「蒲原夜之雪」などは夜の雪景で電灯など無い時代の絵だけど空以外は昼間のように明るい。でも巴水の夜は全てが真っ暗で、小さな灯りで微かに見える景色を微かな色の違いで表現している。

その他、1枚のスケッチで同じ構図の春夏秋冬の4枚の作品があったりする。巴水は昼間のスケッチで夜の絵や夏のスケッチで雪の風景を描いたりしているのも興味深かった。それを思えば、歌川広重の「蒲原夜之雪」も「静岡の蒲原は温暖な地であそこまでの雪はめったに降らない」という謎も、広重の空想の雪であったろうと想像させる。

また、ほぼ半数の版画作品に旅先で描いたそのスケッチが添えられていたり、スケッチから版画にするための構図を決めるための水彩画が添えられていたりする。

試し刷り作品も展示されている。1枚の版画(完成品)になるまでの試し刷りが1枚に対して5点から10点ほど展示されていて(試し刷りの段階で雲が増えたり月が増えたりの試行錯誤が見れる)。

使用された版木が展示されていて、1枚の絵に対して5枚の板/9面使用だったことが分かる。

巴水本人の作業写真があり、スケッチから本刷り(完成)までの工程が解説されていて、版画家+彫師+摺師の分担作業の工程がよく分かる。また、42色の刷りをスライドショーにより色の付いていく様が展示されていたり。

いたれりつくせりの展示でした。

そして、展示数の多さ。
美術館の場所が遠かったのもあり、疲れて途中でもう断念しそうになって、2度ほど椅子に座って休憩しながら(笑)頑張ってやっと1フロアを見終わり、次のフロアへ行くと、さらに同じくらいの量が展示されている(涙)。
入り口で貰った出展リストを見ると284点が載っている。このリストには作品の横に添えられているスケッチの数は入っていない。1万点くらい見た感があったので284点って、一見、少なそうだけど、通常の展示でも70点くらい、大展示でもだいたい100〜200点くらいじゃなかろうか。それが1人の作品だけで300点、それのほぼ全作品が版元の渡邊木版美術画舗の出展というのだから凄い。
ちなみに太田区立郷土博物館では10月27日〜3月2日の期間を3期に分けて約500点を公開中とのこと。恐ろしすぎる。